oharai_kannushi

385: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:08:26.27 ID:+tqySyCx0
2年ほど前の話。 

その年の夏、俺は大小様々な不幸に
見舞われていた。 

仕事でありえないミスを連発させたり、
交通事故を起こしたり、隣県に遊びに
行って車にイタズラされた事もあった。 

原因不明の体調不良で10キロ近く痩せた。

そして何より堪えたのは、父が癌で
急逝したこと。

そんなこんなで
「お祓いでも受けてみようかな・・・」
なんて思ってもない独り言を呟くと、
彼女(現在嫁)が、
「そうしようよ!」
と強く勧めてきた。

386: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:08:53.44 ID:+tqySyCx0
本来自分は心霊番組があれば絶対見るくらいの
オカルト大好き人間なんだけど、
心霊現象自体には否定的
(こういう奴が一番多いんじゃないか?)
で、お祓いが利くなんて全く
信じちゃいなかった。

自家用車に神主が祝詞をあげるサマを
想像すると、シュールすぎて噴き出してしまう。

そんなものを信用するなんて、
とてもじゃないが無理だった。

彼女にしてもそれは同じ筈だった。
彼女は心霊現象否定派で、なお且つ
オカルトそのものに興味がなかった。

だから俺が何の気なしに言った
『お祓い』に食いついてくるとは
予想外だった。

まぁそれは当時の俺が、いかに
追い詰められていたかという事の証明で、
実際今思い返してもいい気はしない。

387: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:09:44.21 ID:+tqySyCx0
俺は生来の電話嫌いで、連絡手段は
もっぱらメールが主だった。

だから彼女に神社に連絡してもらい
(ダメ社会人!)、お祓いの予約を
取ってもらった。

そこは地元の神社なんだけど、かなり
離れた場所にあるから地元意識は
ほとんどない。
ろくに参拝した記憶もない。

タヒんだ親父から聞いた話しでは、やはり
神格の低い?神社だとか。

しかし神社は神社。
数日後、彼女と二人で神社を訪ねた。

388: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:10:12.21 ID:+tqySyCx0
神社には既に何人か、一見して参拝者とは
違う雰囲気の人たちが来ていた。

彼女の話しでは午前の組と午後の組が
あって、俺たちは午後の組だった。

今集まっているのは皆、午後の組と
いうわけだった。

合同でお祓いをするという事らしく、
俺たちを含めて8人くらいが居た。

本殿ではまだ午前の組がお祓いを
受けているのか、微かに祝詞のような
声が漏れていた。

所在なくしていた俺たちの前に、
袴姿の青年がやって来た。

389: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:10:39.71 ID:+tqySyCx0
「ご予約されていた◯◯様でしょうか」
袴姿の青年は体こそ大きかったが、
まだ若く頼りなさ気に見え、
(コイツが俺たちのお祓いするのかよ、
 大丈夫か?)、なんて思ってしまった。

「そうです、◯◯です」
と彼女が答えると、もう暫らくお待ち下さい、
と言われ、待機所のような所へ案内された。

待機所といっても屋根の下に椅子が
並べてあるだけの『東屋』みたいなもので、
壁がなく入り口から丸見えだった。

「スイマセン、今日はお兄さんが
お祓いしてくれるんですかね?」
と、気になっていた事を尋ねた。

390: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:11:16.24 ID:+tqySyCx0
「あぁ、いえ私じゃないです。
 上の者が担当しますので」

「あ、そうなんですか(ホッ)」

「私はただ段取りを手伝うだけですから」
と青年が言う。

すると、待機所にいた先客らしき
中年の男が青年に尋ねた。

どうやら一人でお祓いを受けに
来ているようだった。

391: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:11:49.87 ID:+tqySyCx0
「お兄さんさぁ、神主とかしてたらさ、
 霊能力っていうか、幽霊とか見えたりするの?」

その時待機所に居る全員の視線が、
青年に集まったのを感じた(笑)。

俺もそこんとこは知りたかった。

「いやぁ全然見えないですねぇ。まぁ
 ちょっとは、何かいるって感じることも、
 ない事はないんですけど」

皆の注目を知ってか知らずか、
そう笑顔で青年は返した。

「じゃあ修行っていうか、長いこと
 その仕事続けたら段々見えるように
 なるんですか?」
と俺の彼女が聞く。

「ん~それは何とも。多分・・・」
青年が口を開いた、その時だった。

392: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:12:11.94 ID:+tqySyCx0
シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、
入り口にある結構大きな木が、
微かに揺れ始めたのだ。

何事だと一同身を乗り出して
その木を見た。

するとその入り口の側に、車椅子に乗った
老婆と、その息子くらいの歳に見える
男が立っていた。

老婆は葬式帰りのような黒っぽい格好で、
網掛けの(アメリカの映画で埋葬の時に
婦人が被っていそうな)帽子を被り、
真珠のネックレスをしているのが見えた。

息子っぽい男も葬式帰りのような礼服で、
大体50歳前後に見えた。

393: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:12:40.63 ID:+tqySyCx0
その二人も揺れる木を見つめていた。

シュシュシュシュシュシュシュシュ
シュシュシュシュシュシュ、と音を
鳴らして、一層激しく木は揺れた。

振れ幅も大きくなった。

根もとから揺れているのか、幹の
半分くらいから揺れているのか
不思議と分からなかった。

分からないのが怖かった。

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!
ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!
ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

木はもう狂ったように揺れていた。

老婆と男は立ち止まり、その木を
困ったように見上げていた。

すると神主の青年が、サッと待機所から
飛び出すと、二人に走り寄った。

394: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:13:07.73 ID:+tqySyCx0
「△△様でしょうか」

木の揺れる音のため、自然と大きな声だった。

頷く男。

「大変申し訳ありませんが、お引取り願い
 ませんでしょうか。
 我々ではどう対処も出来ません」

こちらに背を向けていたため、青年の
表情は見えなかったけれど、わりと
毅然とした態度に見えた。

一方老婆と男は、お互いに顔を見合わし、
頷き合うと、青年に会釈し引き上げていった。

その背中に青年が軽く頭を下げて、
小走りで戻ってきた。

いつの間にか木の揺れは収まり、
葉が何枚か落ちてきていた。

395: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:13:27.31 ID:+tqySyCx0
「い、今の何だったの!?」
と中年のおじさん。

「あの木何であんなに揺れたの?
 あの二人のせい?」
と彼女。

俺はあまりの出来事に、言葉が出なかった。

興奮する皆を、青年は落ち着いて下さい、
とでも言うように手で制した。

しかし青年自体も興奮しているのは
明らかだった。

手が震えていた。

「僕も実際見るのは初めてなんですけど、
 稀に神社に入られるだけで、ああいった事が
 起きる事があるらしいんです」

「どういう事っすか!?」
と俺。

396: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:13:56.60 ID:+tqySyCx0
「いや、あの僕もこういうのは初めてで。
 昔居た神社でお世話になった先輩の、
 その先輩からの話しなんですけど・・・」

青年神主の話しは次のようなものだった。

関東のわりと大きな神社に勤めていた頃、
かつてその神社で起きた話しとして先輩神主が、
さらにその先輩神主から伝え聞いたという話し。

ある時から神主、巫女、互助会の組合員等、
神社を出入りする人間が、『狐のお面』を
目にするようになった。

そのお面は敷地内に何気なく落ちていたり、
ゴミ集積所に埋もれていたり、賽銭箱の上に
置かれていたりと、日に日に出現回数が
増えていったという。

397: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:14:22.73 ID:+tqySyCx0
ある時、絵馬を掛ける一角が、小型の
狐のお面で埋められているのを発見され、
これはもうただ事ではないという
話しになった。

するとその日の夕方、狐のお面を被った
少年が、家族らしき人たちとやって来た。

間の良いことにその日、その神社に
所縁のある位の高い人物が、たまたま
別件で滞在していた。

その人物は家族に歩み寄ると、
「こちらでは何も処置できません。
 しかし◯◯神社なら手もあります。
 どうぞそちらへご足労願います」
と進言し、家族は礼を言って
引き返したという。

398: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:19:42.54 ID:bnV0u9wK0
「その先輩は、神社ってのは聖域だから。
 その聖域で対処できないような、許容範囲を
 超えちゃってるモノが来たら、それなりの
 サインが出るもんなんだなぁって、
 言ってました」

「じゃあ今のがサインって事か?」
とおじさんが呟いた。

「多分・・・まぁ間違いないでしょうね」

「でもあのまま帰しちゃって
 良かったんですかね?」
という俺の質問に青年は、
「ええ、一応予約を受けた時の連絡先の
 控えがありますから。
 何かあればすぐに連絡はつきますから」

「いやぁでも大したもんだね、
 見直しちゃったよ」
とおじさんが言った。

俺も彼女も、他の皆も頷いた。

399: もっふるさん 2018/05/08(火) 00:20:04.78 ID:bnV0u9wK0
「いえいえ!もう浮き足立っちゃって!
 手のひらとか汗が凄くて、ていうか
 まだ震えてますよ~」
と青年は慌てた顔をした。

その後、つつがなくお祓いは済んだ。

正直さっきの出来事が忘れられず、
お祓いに集中出来なかった(多分他の皆も)。

しかしエライもので、それ以後体調は
良くなり、不幸に見まわれるような事も
なくなった。

結婚後も彼女とよくあの時の話をする。

あの日以来、彼女も心霊番組を見たり
ネットで類似の話しはないかと調べたり、
どこで知ったのか洒落コワを覗いたりも
しているみたい。
やっぱり気になっているのだろう。

もちろん俺だってそうだ。
しかし、だからといってあの人の良い
青年神主に話を聞きに行こう、という
気にはならない。

「もしもだけどさぁ、私たちが入った
 途端にさ、木がビュンビュンって、
 揺れだしたら・・・もう堪んないよね~」

彼女が引きつった笑顔でそう言った。
全くその通りだと思う。

あれ以来神社や寺には、どうにも
近づく気がしない。


引用元
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/occult/1507758590/


人気ブログランキング

にほんブログ村 2ちゃんねるブログ 2ちゃんねる(ペット)へ
にほんブログ村

ポチッとお願いします(*´꒳`*)



 

sponsored links